「時を戻すことができました。」のセリフでアリバイを崩す時計屋探偵の少女のお話。時計屋で「アリバイ崩し」を扱っている理由は、
「アリバイは時間を根拠にしているから時計屋こそがアリバイに詳しい」
とする謎理論。小説は短編集になっており、誰にとっても読みやすくオススメです。一つ一つの話に非現実なロジックはないので、読みながらアリバイ崩しを楽しむのもよいと思います。
2020年2月1日(土)より、浜辺美波を探偵としてドラマも始まります。
感想(ネタバレ込み)
以下ネタバレ込みで簡単に感想などを書きます。
事実は読者に対してフェアに与えられており、その事実から読者自身がアリバイを崩すことは可能だと思います。美谷時乃に負けないようにアリバイ崩しに挑戦するのが面白いと思います。基本的には犯行時刻を前や後ろにずらして偽装したり、犯行時刻にあたかも別の場所にいたように思わせることによって警察を欺きます。
ストーカーのアリバイ、凶器のアリバイ、失われたアリバイの3つは、アリバイ崩しビギナーの私にとって難しかったです。
ストーカーのアリバイ
刑事が容疑者のアリバイが崩せないから、ふらっと寄った時計屋の少女にアリバイ崩しを頼むところからはじまる。アリバイの根拠となる死亡推定時刻は、遺体の消化器官に残った食べ物より推測された。以下、鍵となる、浜沢杏子の食事時間。
午前9時過ぎ:白米、ハンバーグ、卵焼きなど(スタッフ室で)
昼飯(正午過ぎ):白米、ハンバーグ、卵焼きなど モカ、フロマージュ
おやつ(午後3時):モカ、フロマージュ 何も食べていない
このトリックによって死亡時刻を偽装する。塩饅頭を食べなかったのは、胃に入ると偽装ができないから。
浜沢杏子は膵臓癌でいつ死ぬかわからないため、借金のある妹のため他殺されることを選んだ(自殺では生命保険が入らないため)。元夫は、渋々協力することにした。杏子を喜ばすために。
凶器のアリバイ
午後3時の集荷時に、郵便ポストから拳銃が1丁見つかる。これによって、殺害が午後3時以前にあると偽装する。モルヒネを横流ししていた、製薬会社の平根が部下を殺害する。
現場に残された銃弾2発が、同一の拳銃のものだと思わせるように計画されている。以下、真相で平根の行動。
午前中:被害者を昏倒させ、モルヒネで眠らせて、大腿部に銃弾を撃ち込む。
午後二時−三時(予想された犯行時刻):従兄弟とお食事(正午-三時)
午後三時台:映画館で映画を見た 第二の拳銃で殺害
死者のアリバイ
交通事故にあった男が死ぬ間際に「人を殺した」と告白する。その後、死亡。しかし、死亡した男にはアリバイがあったという。男は推理作家の奥山新一郎であったため、何か巧妙なトリックが使われたのではないかと勘ぐられる。
実際は、奥山は被害者中島香澄を扼殺したと思っていたが、実際は生きていたのである。その後、中島は自宅に戻ったところ、弱みを握ろうと侵入していた大家の磯田によって扼殺される。
(奥山新一郎 は 著者の大山誠一郎 自身をモデルにしている?あと、かつての担任教師の女性とケコンした大統領はエマニュエル・マクロン。)
失われたアリバイ
容疑者は、死亡した河谷敏子の妹で、純子である。敏子は純子を睡眠薬入りのワインで眠らせて、犯行時刻のアリバイを作らせない。しかし、敏子は共犯者のマッサージ師 芝田 によって殺害される。
死亡時刻の根拠となるのは、敏子がマッサージを受けていたとする、芝田とマッサージ店の新入り田川の発言から。この時間以前には生きていると偽装する。しかし、実際には眠らせた純子を替え玉に使い、田川を欺いている。
お祖父さんのアリバイ
時計屋探偵 美谷時乃 の小さいころのお話。時乃のお祖父さんによる英才教育でアリバイ崩しを教わり、そのエピソードのひとつとして話が進む。祖父が時計の前で撮った写真によってアリバイを作る。
実際の事件ではなく、アリバイ崩しの練習問題的な位置付けで読める。30度傾けて写真を撮り、2:20を3:25にするトリック。
山荘のアリバイ
山荘の離れにある時計台で事件が起こる。雪には足跡が3つあり、犯人は行きと帰りで違う靴を履くことによってアリバイが作られている。
ダンベルで殺されそうになったが、逆に殺してしまったというパターン。アリバイがないため、正義感の強い無罪の中学生が連れていかれる。
ダウンロードのアリバイ
一日限定でダウンロードできる曲と部屋の時計を送らせておくことによって、友人に日にちを錯覚させるトリック。3ヶ月前の記憶が曖昧であるということを利用した。
ことば
レッツ、アリバイブレイク。
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