【ネタバレ】小説『十角館の殺人』(綾辻行人)の感想

ミステリー/スリラー

 もはや教養である『十角館の殺人』のネタバレを含む感想を書いていきます。綾辻行人の館シリーズの第一作目で、読まれた方も多い作品だと思います。館シリーズでは、中村青司が手がける異様な館での事件を題材にして話が進んでいきます。

 第一作目となる本作では、中村青司が殺された、孤島にある十角館と青屋敷で話が進んでいきます。この中村青司の事件のしばらく後、K**大学の推理小説研究会のメンバー7人がその館を訪れて、館で事件が進行していきます。

 状況は、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』に似ているので見ておくと一層楽しめると思います。

書籍紹介

 私が読んだのは、講談社の<新装改訂版>になります。漫画版もあります。

十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の7人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける! 1987年の刊行以来、多くの読者に衝撃を与え続けた名作が新装改訂版で登場。(講談社文庫)

内容紹介/講談社BOOK倶楽部

感想とネタバレ

 以下、ネタバレを含む感想になります。


話の進行

 話は「島パート」「本土パート」に別れています。

 「島パート」では、孤島にある十角館に学生7人が訪れて、一人ずつ殺されていきます。このパートではクローズドサークルでの犯行に見え、生存者同士が疑心暗鬼になる様子が描かれています。中村青司が生きていて、島に残っている説も捨てきれないまま進行していきます。

 推理小説研究会のメンバー7人は、海外の有名作家の名前をつけて呼び合います。それぞれ「エラリー」「カー」「オルツィ」「ポウ」「ヴァン」「アガサ」「ルルウ」となります。

 一方、「本土パート」では、死者である中村青二の名前で脅迫状が送られ、それを調査するところから始まります。島に行っていない研究会メンバーであったの江南守須は、中村青司の弟である中村紅次郎のもとに訪れ、中村青二の事件について調べていきます。そこで中村紅次郎の友人である島田潔と出会います。

 中村青司からの手紙による脅迫の意図を、江南は以下のように推測します。研究会メンバーであった中村千織が中村青司の娘であり、飲み会で急性アルコール中毒になって死んでしまったことを思い出させるためだと。その飲み会に参加していて島にいないメンバーの江南と守須が、島田とともに本土パートが進行していきます。

この小説を面白くしているところ

 島田は、江南(かわみなみ)の苗字の感じを知った時に、「こなん」と発音します。また、江南が守須に電話したときに「ドイル」と応答したことから、江南の研究会での呼び方が、

江南 = コナン・ドイル

だったのだろうという印象を与えます。また、江南=コナンだと刷り込まれた後に登場する守須が、

守須 = モーリス・ルブラン

だと暗に刷り込まれます。これらの刷り込みが行われたまま、島パートで一人一人殺されている話を読み進めていくと、島にいる

「オルツィ」エラリー」「カー」「ポウ」「ヴァン」「アガサ」「ルルウ」

のうちに、守須がいるとは思えなくなります。そして、中村青司が生きているかもしれないということも深読みしてしまいます。したがって、「島パート六日目」の、守須の

「ヴァン・ダインです」

によってすべてが繋がり、「!?」という感情を読者に与えます。そして次章「本土パート七日目」で、十角館の火災によって7人ではなく6人の遺体が発見されたと、新聞朝刊に載ります。


誰がなぜ

 守須恭一は中村千織と愛し合っていました。その千織が、研究会メンバーの飲み会で急性アルコール中毒によって死んでしまったため、その復讐として6人を殺しています。

 守須が中村青司による手紙を用いたのは、中村千織の死は6人の責任であり、殺されたも同然ということを告発するためです。また、江南を動かすためです。

壜:プロローグとエピローグ

 プロローグでは、守須=ヴァンが復讐によって6人を裁こうとする気持ちが語られている。そして、犯行計画を書いた手紙を壜(ビン)に詰め海に流す。この復讐が良いものかどうかを委ねて。

 エピローグでは、島田潔が事件に対して別の推理(守須=犯人説)を語ろうとする。その話を遮って島田を離れた守須は、例の壜を見つける。

まとめ

 日本刀で竹切るくらい爽快な「ヴァン・ダインです」です。全員に勧めたい名作でした。館シリーズの第二作目は『水車館の殺人』です。

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