【ネタバレ】小説『ランチ探偵』(水生大海)の感想とか

小説/文学

 ドラマでもお馴染みの『ランチ探偵』を読みました。小説では短編(MENU)が6つあり、かなり読みやすい本になっています。

 2人の女性OLがランチ合コンしながら、相手男性の周囲であった奇妙な話を聞き、OLの1人 天野ゆいか が事件を解いていきます。彼女は話を聞き、事実だけから事件の真相を推理する安楽椅子探偵になります。

 ドラマPRはこちら。

ドラマ「ランチ合コン探偵」第1話PR

感想とネタバレ

 以下に感想+ネタバレを書いていこうと思います。

エレベーター

 夜中にエレベーターが屋上に行く話。ランチ相手は食品関係の会社で働く2人。

 その会社で最近、上司によるパワハラに悩まされ、自殺してしまった男がいる。その幽霊の仕業ではないかという話題で持ちきりである。実際の自殺の原因は、心の支えだった女性が洋食店のマスターと繋がっていたことである。

 女性に頼まれたマスターは、上司のパワハラが自殺の原因だと見せかけるためエレベーターを操作する。また、ゆいかは、ランチ相手の男の1人がその女性に惚れていることを見抜く。

弁当屋

 謎の美女が金曜日に弁当20個買っていく話。ランチ相手は弁当屋のシェフと焼き鳥+カレー屋の店主。

 弁当屋が世話になった店のオーナーが若年性認知症で、オーナーの娘が弁当を買いに来ている。自分の店の味(に似た)おかずを食べ、料理の勘が衰えないようにする。

 また、弁当屋は父と仲が悪かった。ゆいかは、父の身なりなどからリストラされていることと、退職金で弁当屋に融資しようとしていることを推理する。

ストーカー

 S子が銀行でストーカー 蟻田に絡まれ、そこを俳優 弓月剣太郎が助ける。ランチ相手はその銀行にいた男。そのうち1人 初柴は、阿久津麗子を電車で助けて出会ったことから、麗子にストーカー紛いのことをする。

 終始、初柴は先輩男 須藤をよいしょする。須藤は尊大に構える蘊蓄マシンで、麗子は不愉快そうにする。ゆいかの推理にぐぬぬとなる様が描かれている。

 S子のストーカー事件に関しては、S子と弓月がもともと知り合いで、蟻田をなんとかして警察に突き出そうとして計画された。人が多くセキュリティも万全な銀行が舞台に選ばれたのも、おびき出された蟻田がなにをしでかすか分からないためである。

帝王は地球に優しい

 夏美が冷蔵庫に『帝王は地球に優しい』と書き残して消える話。ランチ相手は、消えた妻の夫の双子の兄 稲生正也と、結婚式披露宴で麗子が見つけた男 原隆俊。場所は駄洒落料理名が多いドイツ料理店。

 稲生は冷蔵庫のメッセージを知り、夏美=スパイ説で頭がいっぱいになる。ゆいかが、メッセージがパスポート番号TO8928341(ていおうはちきゅうにやさしい)であることを推理する。また、猫カフェ店員に子供がいる思っていた稲生に対して、ゆいかは子供が猫である可能性も提示する。

*店内のグリム童話について、『カエルの王様』『オオカミと七匹のコヤギ』『ブレーメンの音楽隊』

**最後の、コースター裏に書かれた「なおこの指令は自動的に消滅しない…」は『スパイ大作戦(Mission:Impossible)』を参考に。

毎日変わる動物

 ある家の2階にある動物のぬいぐるみが毎日変わる話。ランチ相手は予備校講師2人。真面目数学 勝俣とフレンドリー英語 平岡。場所は公園で、花見をしながら、以前に出会った焼き鳥+カレーとともに。

 毎日ぬいぐるみが変わり、6種類の動物のどれかだったが、あるとき別のぬいぐるみに変わる。それと同時期に男の下着が干され始める。勝俣いわくここ10日くらいはずっとゴリラのぬいぐるみになっている。

 ゆいかの推理では、子供が分かれた父親に向けて毎日ぬいぐるみを変えている。しかし、ぬいぐるみが変わっていない最近の現状から、育児放棄あるいは虐待されているのではないかと心配になり、麗子らはその家に向かう。子供の父親は、育児放棄されているかもしれないと気づき、泥棒に扮してその家に侵入して騒ぎとなる。実際に育児放棄をしていたことを母親が認めたらしい。

 *為になることば:損失回避バイアス、大数の法則など

婚約指輪

 タンスに入れてあった元妻の婚約指輪が消える話。ランチ相手は、玲子の元彼 上村和馬 と その上司の金子実。「金の子どもが実る」と書く。場所は中華料理屋。

 金子実の元妻が置いていたDVDを取りに来たときに、指輪を盗んだのではないかと金子が疑う。実際は離婚式のときに、指輪は元妻のもとにあり、偽物の指輪がタンスにある状態。一方、金子の従妹の友恵は金子家の家業の手伝いをしており、容姿の良い金子実に惚れている。ゆいかの推理は、友恵の嫉妬感情などから指輪を隠しているとする説。

 上村がわざわざ麗子に会いに来たのは、上村とその彼女の新居に菊の花が届いたから。その犯人として麗子が疑われていた。実際は、花屋のミス。

*為になることば:劈開、モース硬度

次作

 短編はさくさくと事件が解決できて爽快です。そして読みやすい。本作の内容は殺人事件は扱っていない(自殺はある)ため、いささか平和でした。次作も読んでいこうと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました