【ネタバレ】小説『オリエント急行殺人事件』(アガサ・クリスティ)の感想

ミステリー/スリラー

 ミステリーの女王 アガサ・クリスティの代表作である『オリエント急行殺人事件』の感想とネタバレになります。アガサ・クリスティは実際に、オリエント急行でイスタンブールやバグダードへ旅行していたようです。私は、2017年の映画『オリエント急行殺人事件』に合わせて出版された、田内志文=訳のものを読みました。

アガサ・クリスティ 著/田内志文=訳, 2017年11月25日発行, KADOKAWA

概要

 ロンドンへ向かうためイスタンブールから国際寝台車に乗った、探偵のエルキュール・ポアロが、車内での殺人事件を解決する話。雪で列車が止まっている中での犯行であったため、犯人が乗客の中にいるという状況になる。

 話は事実パート、証言パート、推理パートで構成される。事実パートではポアロの視点から、当該の列車に乗るまでと乗客の証言までが書かれている。証言パートでは十数名の乗客の証言やアリバイを聞く。最後の推理パートで、ポアロが真実を明らかにしていく。

 以下はポアロの旧友であり、国際寝台車会社の取締役のブーク氏の発言。

…。あらゆる階級、あらゆる国籍、あらゆる世代の人びとが勢揃いだ。三日間もにわたり、そんな赤の他人同士が一緒に過ごすのだからね。…

『オリエント急行殺人事件』アガサ・クリスティ 著/田内志文=訳, 2017年11月25日発行, KADOKAWA

ネタバレ・感想

 以下、小説の核心部分に触れています。




ざっくりとしたネタバレ

 要するに全員グル。

 被害者のラチェットは過去の誘拐事件で罪に問われなかったため、乗客に計画的に狙われた。犯人は誘拐事件の家族の関係者たちである。ラチェットと同じ客車に乗り込み、互いにアリバイを証明することで彼ら以外の外部の犯行に見せかけようとした。

 しかし、誘拐事件に関する手紙を隠滅し損ねて、現場に残されたことにより、ポアロが誘拐事件との関係から内部の犯行ではないかと疑い始める。綿密に練られた計画であったため、ポアロ(と読者)は誰が犯人なのかわかりにくくなっている。

 犯行が計画通りにいかなかった原因は、「雪で列車が止まってしまったこと」と「ポアロが予約で埋まった列車になんとか乗れたこと」である。

ネタバレ

 この話は2つの説がある。

 1つ目の説によると、証言パートで聞く乗客の話がすべて本当だとすると、犯人はラチェットを刺殺した後、列車から降りて逃走したことになる。これは、「ドラゴンの模様が入った緋色のガウン」を着た外部者による犯行だとする説である。

 2つ目の説は、乗客全員が過去の誘拐事件の家族と関係があり、12人で計画的に犯行したとする説である。ポアロは誘拐事件との関係を見破り、計画的な犯行であると推理した。

 ブークは2番目の説を聞き、衝撃のあまり1番目の説を信じようとする。2番目の説であってほしくないという思い。

…私としては、君が話してくれた最初の答えが正しいと思うね……ああ、間違いない。…

『オリエント急行殺人事件』アガサ・クリスティ 著/田内志文=訳, 2017年11月25日発行, KADOKAWA

 以下、2番目の説を簡単にまとめる。

 まずラチェットのスケージュールを知るために、秘書と従者に雇われる必要があった。このため、ハードマンがラチェットの居場所を調べ上げた。オリエント急行が選ばれた理由は、車掌当番にミシェルが乗り込んでいるため。

 被害者ラチェットの隣室にはハバード夫人が泊まっていた。この部屋から犯行現場の部屋につながる扉があり、そこを通り一人一人が一回ずつ刺すという。

 当初の計画では、外部犯の仕業にするために駅で降りていく謎の人物を目撃するという証言をする予定であった。しかし、列車が事故で止まってしまったため計画が頓挫してしまう。そこで、アリバイが完璧で崩せないアーバスノット大佐とドラゴミロフ公爵夫人に疑いを向けるため、大佐のパイプクリーナーと夫人のハンカチを現場に証拠として残した。これにより、捜査を撹乱させようとする。

 ポアロいわく、止まっている列車という状況では、乗客の身元が本物かどうか調べる術がなく推測に頼るしかない。それでも、乗客との何気ない会話や事実のみから、乗客が誘拐事件にあった家族と関係していることを見破ったのである。これによって2つ目の説が導かれたのであった。

いくつかのこと

 ポアロが乗客に住所を書かせているのは、筆跡を見るため?と思っていた。実際は、刺し傷が左利きの人物によって付けられたものであり、ポアロは乗客の利き手を調べるため住所を書かせた。

 ラチェットのベルが鳴り車掌が応答。部屋の中からフランス語で「ただの間違い」と言われる。しかし、ラチェットは英語しか話すことができない。

 現場に残さざるを得なかった、Hのイニシャルが入ったハンカチ:アンドレニ伯爵夫人(ヘレナ・ゴールデンベルク)のパスポートの油染みは工作である。HelenaをElenaに工作して妻が疑われないようにしようとするアンドレニ伯爵の計らい。実際は、Hはロシア語だとNになり、ファーストネームがナタリアであるドラゴミロフ公爵夫人のハンカチ。

おまけ:映画の予告(2017年版)

 真実を優先するか、正義を優先するか。

映画『オリエント急行殺人事件』予告



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